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さいご
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「もう、おしまいだね」
あの日と同じ駅で、あの日と同じ電車に乗る。
少しだけ古びて、ギイギイと軋む音のする座席は、あの日は気付かなかった。高揚感に包まれたあの日は、なんでも出来る気がしていたから。
彼女の言葉に、せやな、と返す。
ガタガタと揺れる電車と心地よい涼しさ。
安堵と虚しさで包まれた心に響いて、くるしくなった。
───寂しい？
寂しい。
脳内に蘇る彼女の声に、今頃返事をする。あれからもやっぱり彼女は、俺にひとっつも教えてはくれへんやった。
彼女と同じように、俺も頬杖を着いて、窓の外の景色をじっと眺める。あの日の光景が、逆戻しされている。
終わっていく。君と俺の七日間が、終わってしまう。
「また行こう、ロボロ」
「せやな、また行こか」
嘘や。どうせまた、君はひとつも誘ってはくれへんのやろ。
目を閉じて、寝たフリをする。彼女は観念したように息を吐いて、多分また窓の外に目を向けた。
寝たフリ。目を閉じて、Aを意識しないようにする。
Aだけじゃなく、こんな憎たらしい逆再生の景色まるごと。
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「着いたよ」
いつの間にか本気で寝ていたらしく、彼女に肩を揺り動かされ目を覚ます。
未だぼやける視界を戻すため目を擦り、瞬きをする。
手を引かれるまま降りると、そこは最初に俺たちが集まったあの駅だった。
泣きたくなった。どうしようもなく。
視界がぼやける。目元を水が満たす。この景色がもっとぐしゃぐしゃになれば、認識しなくてもええんかもしれん。
そんなに寂しかったの、なんて、そう言ってくれれば。
まだAと、旅ができるのかもしれない。まだAと、居られるかもしれない。
「ありがとうね」
都合のいい幻想は、現実には適わない。
室内やからとっくに意味の無い帽子を押えて、Aは優しく笑う。
俺の家はAの正反対。彼女はスカートを翻して、自分の家へと戻っていく。
もう一度。もう一度だけ、あの時間が欲しい。
もっとやりたいことやってあったのに。
Aのこと、何も知れへんやったのに。
願うなら、願うならもう一度だけ。あの時間を、もう一度。
誰にも縛られへん、邪魔も入らん、
君と俺の七日間逃避行を。
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二度と来ないあの夏の青春
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ミントティー(プロフ) - 灯さん» コメントありがとうございます……！まさかご感想いただけると思わず踊り狂って喜んでいます。読みやすかったと言っていただけると嬉しいです……！これからも元気に更新してまいります！ (5月12日 20時) (
レス) id: d7507200e4 (このIDを非表示/違反報告)
灯(プロフ) - はじめまして、コメント失礼します。どの作品も一つひとつが面白くて、尚且つ読みやすかったです！素敵な作品をありがとうございます！朝夕寒い時期ですのでお身体にお気をつけて、ご健勝をお祈り申し上げます。 (5月11日 13時) (レス) id: 3e566e3157 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ミントティー | 作成日時：2023年12月28日 21時
