お前死んでも寺へはやらぬ*/ci ページ12
死ネタ
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「もうチーノなんて知らない！」
「俺やってもうお前のことどーでもええわ。出てって」
喧嘩して、そのまま家を出ていってしまった恋人は死んだ。
呆気なく死んだ。事故だった。轢かれて、そのまま引きずられて、もうその時には目も当てられない状況だったらしい。
しかも目撃情報によると、ケーキ屋さんでケーキを何個か買っていたらしい。
喧嘩して、仲直りのものを買って、事故。色んな漫画でよく見る展開で、在り来りやな、なんて思っていたのに。
どうして優しくしてやれなかったんやろう。
どうして、もっとAの事を思ってやれなかったんやろう。
葬式の最中。骨となったAを見て、今まで溢れなかった涙がこれでもかと溢れてきた。身体中の水分が無くなるほど。声を上げて泣いたし、何度も何度も謝った。それでも、やっぱりAは戻って来なかった。
せめて、この骨でもいいから。一部分でいいから一緒にいたい。
だからこっそり、Aの骨を盗んだ。
本当に小さくて、どこか分からない骨を。
皆気付かなかった。気付かなかったんじゃなく、気付かないふりをしてくれたのかもしれないけど。
それを持って帰って、じっと眺める。白くて、無機質で。なんて綺麗なんだろう。
「……お前死んでも寺へはやらぬ、」
焼いて粉にして、酒で飲む。
作者不詳の都々逸、やったっけ。
あぁ。Aの骨はきっと、無機質な味なんやろうな。砂糖みたいに甘美じゃない。だからこそ、耽美な味がするんやろう。
そうと決まれば話は早かった。焼くとAが薄れてしまう気がして、焼きはせえへんやった。いっそ粉にすることもやめてしまおうか。
Aに貰ったグラスにビールを注いで、それを一気に流し込む。
喉を通る熱が心地いい。
ぐしゃ、と、Aの骨を優しく砕く。脆くて弱々しい、綺麗な骨。
「A、」
それを口に放り、缶ビールを呷る。
俺の意識はAを受け入れても、本能が受け入れない。吐き出してしまいそうなそれを、口を塞いで無理やり流し込む。
それを飲み込んで、大きく咳き込む。
「A、A……Aッ……！」
ずっと一緒だよ、と。
どこからか、Aの声が聞こえた気がした。
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お前死んでも寺へはやらぬ
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ミントティー(プロフ) - 灯さん» コメントありがとうございます……！まさかご感想いただけると思わず踊り狂って喜んでいます。読みやすかったと言っていただけると嬉しいです……！これからも元気に更新してまいります！ (5月12日 20時) (
レス) id: d7507200e4 (このIDを非表示/違反報告)
灯(プロフ) - はじめまして、コメント失礼します。どの作品も一つひとつが面白くて、尚且つ読みやすかったです！素敵な作品をありがとうございます！朝夕寒い時期ですのでお身体にお気をつけて、ご健勝をお祈り申し上げます。 (5月11日 13時) (レス) id: 3e566e3157 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ミントティー | 作成日時：2023年12月28日 21時
