いつか地獄で会いましょう*/ni ページ17
軍パロ
#
「また地獄で会おうね、兄さん」
パン、と。
乾いた音がした後に、ドシャッと音がする。壁に赤い液体が飛び散った。
目の前で血を垂れ流して、床に倒れ伏しているAを眺める。
手に握った拳銃の冷たさが、熱を持った右手に広がる。
Aは、軍のスパイとして処理することになった。
最近敵国として認定したとある国から派遣されたスパイ。
俺が旅から帰ってきて数日後には、Aは既に地下の拷問室に打ち捨てられるようにして寝転がっていた。それを処理するのが俺の役目だった。
グルッぺンは酷く残酷だ。俺達が手紙でやり取りしているのを知っていて、しかしこの城の中のメンバーでは一番関わりの少ない俺にこの役目を任せた。
グルッペンにとっても苦渋の決断だったとはわかる。
それでも、これは。
「……A」
「A……なあ、A？」
「A、起きろよ……A」
自分で撃った、Aの冷たい体に触れる。
ドクドクとうるさい心臓が、俺だけ生きているという事実を象徴する。
何度も呼びかけても、Aは返事をしない。
何度揺さぶっても、Aは閉じた瞼を開かない。
いつしか俺が贈った紫色のチョーカーの飾りだけが、チリチリと音を鳴らしている。
Aは、これを「首輪みたいだね」と言って、それと、「兄さんとお揃いだ」と笑っていた。
軍の裏切り者。敵スパイ。
俺は、そんな彼女に入れ込んでいた。
兄さん、そう呼びかけてくれるあの笑みが大好きだった。
「兄さん、終わったか」
後ろから聞こえてきたその声に、Aの遺体を抱いて振り返る。
そこにはグルッペンがいた。いつの間に入ってきていたらしい。
「悪かった、」
「そう思ってんなら、Aのところに行かせてくれよ」
「Aは自由にしてくれていい」
俺の言葉には、グルッペンは耳を貸さなかった。
自由に、してくれていい。
自由にしてやらなかったのはお前らだろ、その言葉を必死に噤んだ。
そんな俺を知ってか知らずか。グルッペンは部屋を出ていった。
Aの首を締め付けている首輪を外す。自分の首に巻いたストールの下、Aの首輪を巻いた。
すっかり血に塗れてしまった唇を指先で撫でて、口付けをした。
「A」
いつかまた、地獄で会おうな。
絶対やぞ、絶対。
#
こういうの好きなんです
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 97人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ミントティー(プロフ) - 灯さん» コメントありがとうございます……！まさかご感想いただけると思わず踊り狂って喜んでいます。読みやすかったと言っていただけると嬉しいです……！これからも元気に更新してまいります！ (5月12日 20時) (
レス) id: d7507200e4 (このIDを非表示/違反報告)
灯(プロフ) - はじめまして、コメント失礼します。どの作品も一つひとつが面白くて、尚且つ読みやすかったです！素敵な作品をありがとうございます！朝夕寒い時期ですのでお身体にお気をつけて、ご健勝をお祈り申し上げます。 (5月11日 13時) (レス) id: 3e566e3157 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ミントティー | 作成日時：2023年12月28日 21時
