・ ページ20
#
その後は、紅茶を飲みながら写真の整理をしたり、おすすめの本を教えてもらったり。エーミールさんに教えて貰いながらゲームをしたり、時折二人でうたた寝して、恋人らしいこともしたり。とにかくぐだぐだと時間を溶かしていると、私のお腹がぐぅと音を立てた。
「もうそろそろ夕飯時ですね。……あ、すいません。ちょっと冷蔵庫の中が寂しいんで、お買い物行ってきても大丈夫ですか？」
「あ、はい！大丈夫ですよ」
「家のもんは好きに使ってええので、待っててくださいね」
「分かりました」
そう言って、慌ただしく外出用の服に着替えるエーミールさんを見送る。
机の上にぽつんと残っているクッキーに手をつけてテレビを眺めて、何分、いや、何十分かたった頃だろうか。少し寂しくなってきた。
やっぱり、着いていけば良かったかも。
後悔しているところで。エーミールさんの、とある言葉を思い出す。
───『基本的には出入りは自由にしてくれて構いませんが、ここだけはだめですよ』
そういえば、脱いだ服がとっ散らかっていると言っていた。
折角だからお片付けしようかな、でもだめですよ、と釘を刺されている。でも、お片付けしたら喜んでくれるかもしれない。
最悪、謝ったら許してくれる、と思う。
エーミールさんはいないのに、こそこそ、抜き足差し足忍び足で寝室へと向かう。辺りをきょろきょろ見回してから、ガチャン、と寝室の扉を開いて、電気をつける。
「……………………え？」
開けると、そこには。
辺り一面、天井に至るまで、私がいた。
……いや。私の、写真。
混乱した脳内のまま、壁や天井に張り巡らされた私の写真を見る。
遊園地で撮ったあの日の写真。二人で出かけたあの日の写真。私とエーミールさんのツーショット──エーミールさんの顔が、黒いペンで塗りつぶされている──と、
「なに、これ、」
私がお風呂に入っている時の──写真。トイレにいる写真とか、脱衣所の写真まで、ある。
ゾッとした。背筋が凍って、足がまるで、蜘蛛の巣に絡め取られたように動かない。
どうして？いつ？いつ撮ったの？どうやって？
脳内に、とめどなく浮かぶ疑問。
私はただただ、腰を抜かして床に座り込んで、震えることしか出来ない。
そんな私をよそ目に。
──ガチャ、ガチャン。ガチャ。
無慈悲にも、扉が開く音がした。
#
もうちっと続くんじゃ 長くてすいません
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 97人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ミントティー(プロフ) - 灯さん» コメントありがとうございます……！まさかご感想いただけると思わず踊り狂って喜んでいます。読みやすかったと言っていただけると嬉しいです……！これからも元気に更新してまいります！ (5月12日 20時) (
レス) id: d7507200e4 (このIDを非表示/違反報告)
灯(プロフ) - はじめまして、コメント失礼します。どの作品も一つひとつが面白くて、尚且つ読みやすかったです！素敵な作品をありがとうございます！朝夕寒い時期ですのでお身体にお気をつけて、ご健勝をお祈り申し上げます。 (5月11日 13時) (レス) id: 3e566e3157 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ミントティー | 作成日時：2023年12月28日 21時
