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扉が開く音の後、ぎし、ぎしと床が軋む音がする。
その音は私の背後で停止して、がさがさとビニール袋の音がした。
エーミールさんの、買い物袋の音。
「……Aさん？」
「ぁ、ち、違うの、こ、れは」
「……すいません、お目汚しを。まだ未完成なんです」
今度こそ、思考が停止する。
まだ未完成？未完成って、どういう──
そんな私の思考を読み透かしたように、エーミールさんは腰を抜かす私を後ろから抱き締めて、耳元で呟いた。
「すいません、あなたに何も言わずに、風呂やトイレにまで隠しカメラを設置してしまって」
「それに、まだ未完成やのに、見えるような環境にしてしまいすいませんでした。鍵をつけておくべきでしたね」
「しかもあなたに嘘をついて──本当に、すいません」
滔々と、つらつらと、ぺらぺらと、謝罪の言葉を述べるエーミールさん。だけどその全てが的外れ、いや、あながち的外れでは無いものもあるけれど。
「ど──どうして、こんなこと」
天井に。壁に張り巡らされた私の写真の目線が突き刺さるような気がして。恐怖で、身体が震える。
「ああ……その顔も素敵ですね。今は生憎カメラが手元にないので、スマホカメラで失礼します」
震える私を、まるで気にも留めていない。
エーミールさんはゴソゴソとポケットを探って、スマホを取り出した。誕生日に贈った、茶色い革のスマホカバー。蒼い蝶のチャームが括られている。
「はい、チーズ」
パシャッ、と。エーミールさんが、シャッターを切る。
画面に映った私の顔は、ひくりと引き攣っていた。
「どうして、どうしてこんなこと」
うわ言のように繰り返した言葉。
エーミールさんが、クスリと笑ってそれに返事をした。
「ただの趣味ですよ」
ご飯にしましょうか、と。何事も無かったかのように立ち上がるエーミールさんの背を眺めることすらできず、私はただその場に座り込む。
写真に収まっている幸せそうな笑顔の私が、とてつもなく愚かに見えた。
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勢いでした。お目汚し失礼。
キャラガタガタですね……申し訳ないです。
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ミントティー(プロフ) - 灯さん» コメントありがとうございます……！まさかご感想いただけると思わず踊り狂って喜んでいます。読みやすかったと言っていただけると嬉しいです……！これからも元気に更新してまいります！ (5月12日 20時) (
レス) id: d7507200e4 (このIDを非表示/違反報告)
灯(プロフ) - はじめまして、コメント失礼します。どの作品も一つひとつが面白くて、尚且つ読みやすかったです！素敵な作品をありがとうございます！朝夕寒い時期ですのでお身体にお気をつけて、ご健勝をお祈り申し上げます。 (5月11日 13時) (レス) id: 3e566e3157 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ミントティー | 作成日時：2023年12月28日 21時
