・ ページ26
#
「Aちゃん、俺の事嫌い？」
「嫌い、では、ないけど……」
「じゃあ、立候補してええやんな」
「え、り、立候補、って」
「分かっとるやろ？彼氏に、立候補」
「急に……」
どうしたの、その言葉はオスマンが私の口にフィナンシェを突っ込んできたせいで止まってしまった。
美味しいはずのフィナンシェも、今は味が分からない。
「俺、悲しかったんやで？Aちゃんが彼氏作って、平気な顔して俺ん家来た時とか。あー、俺男として見られてへんのかって」
「そ、んなことは……」
ない、と言いきれなかった。
オスマンは、ただの友達だと。お茶会仲間だと、勝手に心の中で、オスマンも私をそう思っていると勘違いしていたが、実際はそうじゃなかったらしい。
オスマンは、私のことを、一人の女性として見ている。
「俺、Aちゃんのこと大っ好きやで？Aちゃんの好みも解っとるし、紅茶やって、Aちゃんの為に美味しい淹れ方とか頑張って調べてん」
「そ、そこまで……？」
「そ」
そんくらい好きってことや、そう言ってオスマンはディアマンクッキーを頬張る。その所作がやけに美しく見えた。
緩慢で、余裕ありげなその仕草と、伏し目がちの顔。儚げ美人ってこういうことなんだ、と思った。
「って訳で、これからは「男の人」って見てくれたら嬉しいわ」
「そ、そんな殺生なあ……！」
「それ、合っとるん？使い方」
くふくふと楽しそうに笑うオスマン。いつもなら可愛らしいと思ったけど、今はなんだかカッコイイ、が先行する。
なんだか、オスマンの術中感がすごいけれど、気にしないことにした。
「恋愛にも、角砂糖とミルクは必須やで」
「ん？な、なんか言った？」
聞こえないふりをした。声が上擦ったような気がして、目線をおろおろと泳がせると、オスマンはふっと鼻で笑って、
「うぅん、何も」
と言う。
なんだか恥ずかしくなって、思考を逸らすため、紅茶を啜った。
角砂糖とミルクの入った紅茶はやけに甘く感じる。
──恋愛までこんなに甘かったら、私は死んでしまうかもな。
熱くなった顔は、湯気をかすかに立てている紅茶のせいにした。
#
ちょっとエモい……のか……？？？
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 96人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ミントティー(プロフ) - 灯さん» コメントありがとうございます……！まさかご感想いただけると思わず踊り狂って喜んでいます。読みやすかったと言っていただけると嬉しいです……！これからも元気に更新してまいります！ (5月12日 20時) (
レス) id: d7507200e4 (このIDを非表示/違反報告)
灯(プロフ) - はじめまして、コメント失礼します。どの作品も一つひとつが面白くて、尚且つ読みやすかったです！素敵な作品をありがとうございます！朝夕寒い時期ですのでお身体にお気をつけて、ご健勝をお祈り申し上げます。 (5月11日 13時) (レス) id: 3e566e3157 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ミントティー | 作成日時：2023年12月28日 21時
