まだ触れてない/ci ページ29
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俺の彼女はすごく、それはもうすごく恥ずかしがり屋。
キスしようとしたらさささーっと引っ込んで、枕で口元を隠してしまうし、ひどい時はハグさえも拒んでくる。
本人も「チーノくんとキスしたい」とは言っているけど、やっぱり恥ずかしさが勝ってしまうらしい。
可愛ええなあ、とは思うけど、やっぱり俺だって我慢ならない時がある。
どーっしても、どーしてもキスしたい時が、ある。それが今。
「ち、チーノくん、な、えっ、ど、どうしたの」
そんな俺はどうやら勢い余って、彼女をソファに押し倒してしまったらしい。俺に組み敷かれている彼女は、顔を真っ赤にしていた。枕で顔を隠したがっているのだろうけど、頭の上で手を押さえつけてしまえばそれさえできない。
ヤベ、って思ったけど、まあ、うん。
すまん、A。これもお前のためや、後でどんだけ俺の事引っぱたいてもいいから。なんやって買ったるから、頼む。今回だけは許してくれ。そう思いながら、俺は、Aの柔らかな唇に顔を近づけて──。
「ひゃ、っ、……！」
は、やらなかった。
しかし目を瞑って力んでいたAは、「キスされた」と信じて疑わず、顔を真っ赤にさせていた。
……怒ったりはせえへんのか。
「ちぃの、く」
「んー？」
「も、キス、した……っ」
「えー？まだ触れてへんよ」
「う、嘘！」
「ほんま。俺が嘘ついたこと…………
あるな」
「あるね」
マ、それはそれでええわ。
両手で押さえつけていたAの手首を片手だけで押さえて、白くてやわい頬をするりと撫でる。それだけでびくっとして、小動物みたいにぷるぷる震えていた。
ハッ、と意識が戻ったような感覚に襲われて、俺は慌ててAの身体を解放して、急いで起こした。
「ァ、ご、ゴメンな、怖かった？」
「や、ち、あの、ちがうの」
もじもじとしながら、キョロキョロと目線を泳がせて。
言葉を探すように、指先をそっと組みあわせて。
「……う、うれしい、から……」
そう言い放った彼女の顔は、耳どころかもはや全身が真っ赤で。
今にも蒸発しそうやなあ、と思った。
──うれしいから。
嬉しいんか。そっか。そうなんや。ふぅーん、そうなんや……
そこからの行動はそれはそれはもう早かった。小さな体を抱きかかえて、大急ぎで寝室に向かう。ベッドに放り投げられた彼女は、えっ、と目を丸くさせていた。
「もうそろそろ、進もか」
まだその唇に、触れてすらないけれど。
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ミントティー(プロフ) - 灯さん» コメントありがとうございます……！まさかご感想いただけると思わず踊り狂って喜んでいます。読みやすかったと言っていただけると嬉しいです……！これからも元気に更新してまいります！ (5月12日 20時) (
レス) id: d7507200e4 (このIDを非表示/違反報告)
灯(プロフ) - はじめまして、コメント失礼します。どの作品も一つひとつが面白くて、尚且つ読みやすかったです！素敵な作品をありがとうございます！朝夕寒い時期ですのでお身体にお気をつけて、ご健勝をお祈り申し上げます。 (5月11日 13時) (レス) id: 3e566e3157 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ミントティー | 作成日時：2023年12月28日 21時
