君と俺の七日間逃避行/rbr ページ6
学パロです
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「逃げてみない？」
暑い夏の日。その日の気温は高く、湿度は低め。
高校二年生になって初めて知り合ったばかりの君は、放課後俺に教室に残るように伝えた。
言われた通りに残っていると、彼女は目の前の席の椅子をくるりとひっくり返して、俺の机に顎を載せる。
血色のいい、薄い色のリップが塗られた唇を動かして、そう言い放った。
窓越しに橙色の陽射しが差し込む教室。
放課後のため、冷房が切られたこの場所は、薄く汗ばむ程の暑さやった。
そんな教室で彼女は汗ひとつかかずに、平気そうな顔をして言った。
しばらく思案する。
何から逃げるんや、なんて。そんな野暮なことは聞かなかった。
───いや。聞かせなかった。
彼女の瞳は、そんなことを言わせないような圧を感じさせるような瞳やったから。
やけに熱の籠った、オニキスの瞳。
是か、非か。
是のみを受け入れ、非を排除する、熱。
俺の返答は、愚かにも決まりきっていたらしい。
もうとっくに退路を塞がれていた。間抜けな袋の鼠やな、とつい笑みがこぼれた。
「何笑ってるの」
「いいや？Aもおもろい事言い出すなあって」
「で？どうなの」
「分かりきっとう癖によう言うわ」
なんだ、と。彼女はさぞかしつまらなさそうに言う。
彼女は椅子から立ち上がって、暑いでしょうと言って扇風機のスイッチをつけた。いっその事冷房を付けてくれればいいのにとも思ったけど、言わないでおいた。
「明日。待ってるから」
「分かっとる」
話すことがなくなって。いや、話さなくなって。
俺たちは、扇風機の駆動音だけがする教室で、静かに時間を過ごしていた。彼女が本を開くのと同時に、俺も本を開く。
逃げる。
逃げる、か。それが彼女にとって何を意味するのかが俺には分からんやったけれど、彼女にとって、きっとすごく大切なことなんやろうと。一人で自分を納得させて、そこでようやく文字に目を滑らせていただけということに気づく。
本のページを戻って、俺は活字に目を通し始めた。意味を咀嚼して、飲み込んで、また次を咀嚼する。
目の前の彼女は本が好きで、俺もその影響でこうして本を読むようになった。彼女は大の本好きで、図書委員。日がなおすすめの本を紹介してくるような子だった。
だから、ほら。
俺ばかり見ていないで、Aも本を読んだほうがええんとちゃうか。
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ミントティー(プロフ) - 灯さん» コメントありがとうございます……！まさかご感想いただけると思わず踊り狂って喜んでいます。読みやすかったと言っていただけると嬉しいです……！これからも元気に更新してまいります！ (5月12日 20時) (
レス) id: d7507200e4 (このIDを非表示/違反報告)
灯(プロフ) - はじめまして、コメント失礼します。どの作品も一つひとつが面白くて、尚且つ読みやすかったです！素敵な作品をありがとうございます！朝夕寒い時期ですのでお身体にお気をつけて、ご健勝をお祈り申し上げます。 (5月11日 13時) (レス) id: 3e566e3157 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ミントティー | 作成日時：2023年12月28日 21時
