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一日目
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「暑いね」
次の日。休日返上で近場の駅の電車に乗り、降りる人がほぼ居ないような田舎の駅まで向かって、俺たちはそこから行く宛てもなく歩き続けていた。
そうしていくうちに、昼に近付いていって、気温がだんだん上がってきたころ。黒曜色のリボンが蝶々結びで巻かれた麦わら帽子を押さえながら、彼女はこちらを振り返った。雲のように白い、可愛らしいワンピースが、快晴の青空と殺風景な田舎の道によく映えている。
汗ひとつかいてへんくせに。そう言い放つと、制汗剤のスプレー缶をこちらへと投げ渡してきた。
確かに、彼女の通ったあとの道は微かに爽やかな匂いがした。
これか、納得していると彼女は、俺の手から冷たいそれを奪い取る。
「ロボロも付けてみる？」
「ええん？」
「ちょっとだけね、残りがどれだけあるかわかんないんだから」
プシュウ、と。彼女は俺の腕や足にそれを吹きかける。
冷たい制汗スプレーが肌にしみて心地良い。彼女と同じ、爽やかな香りが俺の体からした。似合わへんな、そう呟くと、Aは「似合うよ」と笑ってくれた。
「飲み物買おうか」
自販機なんてこの辺にあるんやろうか。
もしかしたら、それを探すところから始まるんかもしれん。
吹いた風が、Aの黒髪を揺らす。
それと同時にスカートが風に靡いてふわりと舞う。慌てて目をそらすと、Aがブッと吹き出した。
なんや、と言ってみれば、おかしそうに、
「そんなに焦らなくてもどうせ見えないでしょ！」
と。
それでも男は気を付けた方がええねん。そう言うと、Aはさらに笑い始めた。
やけに可愛くて、ぼーっとそれを見つめる。
「あ、自販機あった。行こ、ロボロ」
俺の手を引いて、自販機へと駆け出すA。
その背がやけに大きく見えて、頼もしく見えて、俺は彼女の手を強く握り返した。
「ロボロ、何飲む？やっぱりコーラ？」
「おん。Aは？奢るで」
「まさか。わざわざ着いてきて貰ってるお客人に奢らせるわけにはいかないよ」
俺、お客人やったんか。
せやったらお言葉に甘えさせてもらおうか、と、コーラをお願いする。彼女は無糖の缶コーヒー。
近場のベンチに座って、缶をぶつけて乾杯。
足元では、アリの行列が歩いている。
彼女はそれに砂をかけた。
「いいなあ、」
何処が？どうして？なにが？
疑問が色々浮かんだがひとつも聞けなくて、俺は静かに雲ひとつ無い空を見上げていた。
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快晴
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ミントティー(プロフ) - 灯さん» コメントありがとうございます……！まさかご感想いただけると思わず踊り狂って喜んでいます。読みやすかったと言っていただけると嬉しいです……！これからも元気に更新してまいります！ (5月12日 20時) (
レス) id: d7507200e4 (このIDを非表示/違反報告)
灯(プロフ) - はじめまして、コメント失礼します。どの作品も一つひとつが面白くて、尚且つ読みやすかったです！素敵な作品をありがとうございます！朝夕寒い時期ですのでお身体にお気をつけて、ご健勝をお祈り申し上げます。 (5月11日 13時) (レス) id: 3e566e3157 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ミントティー | 作成日時：2023年12月28日 21時
