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二度寝をすることは、すっかり目が覚めちまっていたから叶わなくて
妙な安寧に身を委ねてうだうだと寝返りをうつ
部屋を見渡してみれば、壁に時計が掛かっているのを見つけた
そういや、時計の針の音が昨日はすげぇうるさかった気がすんのに、今はその秒針を刻む音はかなり小さい
コンコン、と軽く鳴らされたノック音にかき消されるほどだった
ゆっくりと開かれるドアの隙間からは少しだけ冷たい空気と、昨日と変わらず”神”と書かれた面をその顔につけた医者がこの部屋に入ってくる
「お、起きてる。えらいね〜」
横になったままなのは失礼だし、上半身を起こす
……起きてるだけで褒められるのは、なんつーか、照れを通り越して恥ずかしいっつーか、妙な悪寒みたいなのが背中を這うというか……
合計20余年くらい生きてるこっちからすれば、その、なんというか
穴があったら入りたいぐらいの気まずさが生まれるというか……
そんなことを思っていたら若干ひんやりとしたものが、額に当てられた
反射的に肩が動いて、芯が冷える思いなのに急激に活発になった心臓のせいで嫌な汗が溢れ出してくる
よくよく考えてみて、狭まっていた視界を少しだけ上に動かせば、冷たいその正体は医者の手の平だった
「あぁ……怖がらせて、ごめんな?」
額に当てられていた手が上の方へと移動し、ふんわりと撫でられた
髪の毛と頭皮が受け取るその感覚は、過去に体験した痛みとは似ても似つかなぇようなもんだが
前の主人に叩かれると思って目をつむったら、髪の毛を引っ張られたことを思い出した
髪の毛が引きちぎれていく音が、今にでも聞こえてくるような、そんな気がしてくる
なんか頭を撫でているが、その次は一体何をすんだ……?拳骨か?いきなり豹変して、髪の毛を掴んで地下牢にぶっ込むのか?
少しでも自分を守るために嫌な未来ばかりを想像したが、大人の手はあっさりと離れて
少し、戸惑った
「熱は無さそうやね。体を動かすのが疲れるとか、痛いとか、そういうのは感じる?」
「いえ……、特に何も、ありません」
「ん。なら、顔を洗ったり、歯を磨いたりしに行こうな」
”ついて来て”
そう言って背中を向けて、ドアの方へと歩いて行く医者
言われた通りについて行こうと、足を立たせれば
先程と同じ痛みが全身に巡る
昨日は何ともなかったのに
心の中で貧弱な自分の体に悪態をついたとき
どうして昨日は歩いても痛くなかったのか
ふと、そこが気になった
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作者名:ねっこんこん x他1人 | 作者ホームページ:http://nekokobuta
作成日時:2024年3月20日 2時